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上床 和則



第10話 コモロ通信 その1

 コモロ諸島は、地理的に4島からなる。ただし、4島のフランスからの独立に絡み、足並みをそろえなかったのがマイヨット島で、フランス領に残ってしまった。
したがって、コモロ連合という国家単位でいうと、グランドコモロ島、モヘリ島、アンジュアン島の3島となる。コモロ諸島は、南島から海底火山が噴火爆発して、時間をかけて北西に連鎖して海上に隆起し、火山島がで
きあがったと思われる。火山島は、新たな溶岩の供給が収まると、一万年単位か十万年単位かよくわからないが、長い年月をかけて岩石間が密になって沈んでいく。
 その間に、島の周辺の海中では植物の活動が活発化
し、珊瑚が生息し始める。植物故、光合成を行うためには太陽光が必要で、5〜10メートルというような浅海に珊瑚礁が生息するようになる。長い年月をかけて島が沈んでいくため、深いと
ころで光合成ができなくなる珊瑚礁は生命活動を終えるが、新たな珊瑚がその上に生息する。それがまたまた長い年月をかけると、見事な環礁となって、真ん中は島、浅い海域を経て1〜2km沖に珊瑚
の環礁があるという景観を作り上げる。
 マイヨット島は、一番古い島なので、この環礁があり、環礁内の内海は静穏で観光的な資源になりやすかったのであろう、フランス海外県という地位も獲得して、ヨーロッパからビザなし渡航が可能で、経済的
に潤っているようである。
 私が住むアンジュアン島は、2番目に古い島である。一部には、環礁が形成されつつあるが、まだ若い部類なのであろう、発達しきれていない。このため、海洋観光資源に乏しい。
ただ、標高1569mの最高峰を中心に、長い年月をかけて風雨が見事な渓谷を刻んだため、水量が豊富な渓流があり、落差8mの瀑布も見ることができる。
 モヘリ島は3番目に古い島で、一番面積が小さい。自然の景観という点では一部の観光客には愛されており、島の南部海域は遠浅の沖合に小さな島が点在し、鯨も訪れる海域である。
この辺り一帯は国立公園にも指定されており、リビングストンコウモリだったか、固有種がいるようである。
 最後は、一番若いグランドコモロ島で、未だ火山活動は健在で、2003年だったか、大量の溶岩が村を襲った。一番大きな島で、比較的なだらかな地形のため、居住には適しているのであろう、コモロ連合の首
都はここモロニに置かれている。環礁はまだ形成されていない。太平洋の環礁のあるおそらく太古に噴火した山頂部が平坦な島々として顔を見せるだけの島々が、自身の沈下と海面上昇によって海面下に沈んでいく状況を見る
機会があるがいたましい。一方で、ここはまだまだ若い島々であると安心する。
 この写真は、上空から見たグランドコモロ島の南島岸で、黒い帯は新しい溶岩流の痕跡である。別の黒い固まりは、飛びゆく雲の落とす陰であり、間違いなきよう。


 

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