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上床 和則



第12話 コモロ通信 その3

 海外に行って、レストランのメニューを見て、何を頼んで良いかチンプンカンプンで悩んだ体験はおありであろう。そんなときは、ちょっと失礼ながら、お隣や奥のお客のテーブルに 並んでいる料理をこそっと指さして、同じ物を頼むなどの手はある。ショッピングモール等での買い物も、陳列されている物を辞書さへ持っていれば調べて納得して買うことはできる。
 今までの海外経験で、一番注文が難しいと思っているのが散髪の注文である。まさか、お隣と同じ髪型にしてとは言えない。なんと言うか、アフリカでは多くの方が天然パーマである。サンプルの写真集が置いてあって、かっこいいモデルの髪型を示し て「同等にしてくれ。」と言おうものなら、「あんたの少ない髪では無理。」と言われかねないし、だいたいそんな物はアフリカには置いていない。
 したがって、一番望ましいのは、日本で自分の散髪したての写真を撮ったうえ持参して、「これと同じように。」ということであろう。ただ、性格的にそんな準備をするタイプではない。そこで、海外では、自分の希望する髪型(自分の場合は短さ)を、一生懸命に説明して、切り手に理解してもらう必要がある。ただ、この作業が難しい。
 日本であれば、「こころもち短めに。」と言えば、意をくんでくれる。
ところが、そんな複雑な外国語は操れない。それで、仕事中の車での街なかの移動中などにアンテナを張って、テクニックがありそうな散髪屋の目星をつけるなどの能力が自然と発達してくる。ここコモロ連合のアンジュアン島で、目星をつけた散髪屋へ早速行ってみた。
 店に入るなり、メインは女性向けの美容室とすぐわかる。
「私の髪を切って欲しいんだが・・・」
「理髪師は出張中でいないから、代わりにいい店を紹介して上げるわ。」
なんとも親切な人たちである。
 ということで、紹介された店に行ってみた。ここも、移動中に目にはとめていたが、女性専門と思っていたため候補からは除外していた。女性3人で店をやっている。内部は非常にこぎれいで感じがよい。
 まずは、洗髪だが、仰向けに天井を見た状態で、丁寧にマッサージしながらやってくれる所なんて、その他のアフリカ諸国にはなかった。これもアラブ系の商法が輸入されたのであろうか。散髪になると、まずは、「ハサミにする?それとも、バリカンにする?」から始まって、その後細部にわたって「ここはどうする?」と聞いてくれる。
 それで、失礼ながらマダムに頼んで作業中の写真を撮ってもらった。
それがこの写真である。これから5ヵ月、この店に通いそうである。

 

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