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上床 和則



第15話 コモロ通信 その6

 毎朝7時前、ホテルの朝食はビュッフェスタイルで、大きなテーブルの上に並ぶ皿に盛られた食べ物を、自分の皿に移していく。そして、好きな食事用テーブルを選ぶのだが、私は、湾を望む窓辺の席を好んで使う。
 ジュースは日替わりで、グァバ、マンゴ、ミカンなどの天然物が並
び、朝食前の胃に心地よく染み渡る。それから、フランスパンとスパゲティを少量食べて、果物に移る。バナナ、マンゴ、ミカン、メロン(ちょっと日本の感覚とは違い、 ぱさつく)、イチゴなどを食して、紅茶で締めというパターンが多い。
 さて、この食堂の窓辺に珍客がやってくる。花弁の前でホバーリングする姿を見たので、ハチドリの一種と思う。全体が濃いブルーの羽毛に包まれているものの、首周りだけは淡い ブルーである。クチバシは花の蜜を吸い取るのに便利なよう若干湾曲し、雀のクチバシと比べるとかなり長い。といっても、クチバシを含めた体長はというと、10センチメートルにも満たないであろう。
 このハチドリ君、私の席のすぐ近くでクチバシで食堂の窓をつつく
のである。毎朝見ていると情が移ってくる。このハチドリ君、ひっとしてもてないの?と当初は思ったものの、ちゃんとした伴侶を持っているのが後日わかった。
 雌の体色は淡い茶系で、ハチドリ君の特等席の食堂の窓辺以外では
二羽で木々の間を飛び回っている。今朝も幸せの青い鳥が窓辺にやってきたと勝手に思うと、今日も元気に乗り越えられそうな気がする。
 このハチドリ君、写真撮影のリクエストにはなかなか応えてくれ
ず、まともな写真が撮れない。したがって、学校の敷地内で見かけた、鮮やかな赤い小鳥の写真を代わりに掲載する。
 皆さんに、幸せが訪れますように。

  

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