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上床 和則



第18話 コモロ通信 その9

 日曜日、職場である水産学校の教職員とその家族約20人とともにピクニックに出かけた。楽しみながら相互理解するにはいい機会だ。
 車で30分程度、アンジュアン島の首都ムツァムンドを抜けて西に海岸沿いを走る。ムジャマウエという村の標識がある側道に車を止め、食材とバーベキュー用品を持って斜面を下る。ジャングルの中に人が通った跡がある。
 200m位下ったであろうか、するとアンジュアン島で初めて見るまともな砂浜に出る。午前10前だ。今まで見たアンジュアン島の海岸は、ゴツゴツした溶岩むき出しの岩場か、砂利の海岸である。ここは珊瑚の死骸が白い砂として海流に乗って湾内に入って堆積するようだ。真砂(まさご)という日本の古い言葉を思い浮かべた。
 早速女性も男性も薪集めを始める。日本で見かけない光景といえば、木から落ちて朽ち果てた乾燥したココの皮が燃料になることだ。
 薪集めが終了すると、女性陣はマニョック(キャッサバ)、タロイモ、食用バナナの皮をむく。男性陣は購入してきた牛肉をさばき、魚の鱗を落としてぶつ切りにする。頃合いを見て、カマドに火がはいる。まずは、大胆にパンの実を8個ばかり火の中にくべて、丸焼きにする。
 引き続き購入してきた炭に火をおこし、海水で洗っただけの牛肉のぶつ切りの鍋が炭火の上に乗る。この鍋に足したのは、タマネギ1個のみじん切りだけである。続いて野菜サラダの準備にかかり、マニョックを大鍋でゆがき始める。魚の網焼きも始まり、計4箇所で煙が上る。
 サラダができあがる頃には、パンの実もほどよく黒こげになり、若 干さました後、大胆に包丁で皮をむいていく。また、牛肉の煮込みも本来の味だけのものが皿に盛られる。見計らったように正午頃だ。
 それらを食べ始めると、油を這った大鍋でバナナ、タロを次々に揚 げていく。それらを順番に、一通り食べたかなと思っているとまた魚をさばき始める。
 そして今度は、米を洗って鍋で炊き始める。牛肉の残りは、今度は串焼きにしているようだ。魚は焼いた物をココスープに入れて煮込んで味をなじませ、ご飯の上にかけて食べる。
 この国の人たち、女性も男性も、その食欲旺盛さには驚かされる。ところで、昼前に漁師がイセエビを捕ってきた。岩場の影で生け簀状態にしている。昼食後に頃合いをみはらかって買いつけて、ホテルに持ち帰って、刺身にして食べようと密かに私は夜のプランを練っていた。しかし、次から次に出てくる料理を見事に食べすぎて、夜のプランはギブアップした。

   

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