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第21話 コモロ通信 その12

 アンジュアン島にあるムツァムッドやミロンツィの街なかを散歩する。天を営んでいる人たちに、「ジェジェ」と挨拶すると「ジェマ」と答えが返ってくる。この国の言語は、アフリカ大陸東岸にあるタンザニアなどで使われるスワヒリ語が語源のようだ。
 歴史的には、現住していた人たちの中に、中東からアラブの人たちがやってきて、イスラム文化を築き上げた。したがって、宗教としてのアラビア語も入り交じってしまい、独特なコモロ語ができあがっている。その他の新しい例えば科学分野の単語は、スワヒリ語にもアラビア語にもないため、フランス語を取り入れている。したがって、現地の人たちの会話を聞いていると、ちょっと不思議な感覚になる。
 トルコ料理のブルグルピラフがレストランのメニューの一部になっ
ている。ピザやスパゲティは、旨いかまずいかは別にして、どこでも当たり前のメニューになっている。このほかに、タンドリーチキンなどのインド料理も入り込んでいる。因みに宿泊しているホテルのシェフはインド人でカレーが旨い。したがって、これらの食文化も家庭の中に入ってしまった。
 一方、音楽的には、打楽器はあるが西アフリカのように楽器もリズ
ムも発達しているわけではない。このほか、特に弦楽器、管楽器もなく楽器の面では少々物足りない。しかし、お祭りの際には独特の歌い回しがあって、これは女性が担う。ただ、同じ節回しの繰り返しで単調である。
 若者達の音楽嗜好はというと、欧米を向いてしまっている。土曜日の夜(金曜日は宗教の安息日故ない)にはどこかで大音響をともなった大ディスコ大会が催される。むろん酒を飲む者は少ないが、テンションをあげるすべは知っているようである。
 いろんな意味で、この国を、地理的にアフリカの一部と片付けてし
まうにはもったいない。まず、アフリカ諸国で路上駐車しようものなら、車上荒らしに会う確率が非常に高い。しかし、この界隈にはそれがない。ハンディーキャップの方達を除いて物乞いがいない。
 不思議な国、コモロである。
 写真は、迷路のような旧市街の一角である。はっきり言って、自分が今どこにいるのかよくわからない。仲良く手をつないで前を行く二人はれっきとした男性の大人だが、決してアチラ系ではない。仲の良さの表れである。
 私はこのように手を握られるとすぐ「アレッ」とか言いながら、手をふりほどいて何かを探すようにポケットをまさぐることにしている。いやー、やはり私は日本人なのではずかしい。


   




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