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上床 和則



第27話 コモロ通信 その18

 今度は沢登りに挑戦した。日曜日の朝8時に宿を出て、いつもの通勤途中に見慣れた涸れた川の河口部から上流部を目指す。現在は乾季で降水量が少なく、30分歩いてやっと水が流れている川床に出会った。
 そこから少し登った川原で洗濯をしているおばちゃんに、この川の 上流の水源の在りかを訪ねる。私の軽装(弁当も水も何も持っていない)を見て、「水源は遠いから違う日にしたら?」と言われる。どうやら、片道3時間はかかりそうだ。彼女の話では、水源の近くで温泉もわいているらしい。
 まあ、行けるところまで行ってみようと沢と人が歩いた跡の道を登 り続ける。途中で10人ほどの木こりに出会った。その様子を見ていると、むやみやたらに森を伐採しているわけではない。薪の材料の乱獲はないようなので安心した。
 川が運んでくる栄養塩(ケイ酸塩、リン酸塩、硝酸塩など)は、海 で植物プランクトンを育てる重要な役割を担っている。その豊かな栄養塩を育むのが森だと思う。したがって、漁業にとっても川と森は大切である。ただあまりにも狭い湾内などが栄養塩が多すぎて富栄養化すると赤潮などの被害に遭う。ここコモロの沿岸部ではその被害はなさそうだ。
 途中落差2.5m程度の滝と、岩肌を数段くらいに分かれて落ちてくる小さな滝の集合に出会った。水はさほど冷たくはなく、摂氏18度くらいであろうか。滝壺みたいな場所では、体長5cmくらいの魚が泳いでいる。残念ながら名前はわからない。
 うわさでは沢エビやウナギもいるとのことだが、結局見ることがで きなかった。11時に宿に戻ったので往復3時間の行程である。次はもう少し大きな川を狙ってみようかと思う。
  





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