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上床 和則



第3話 チュニジア通信 その3

 スファックスから車で南下し、ガベス市を過ぎて暫くするとザラットと標識のかかるロータリーがあり、左折する。この辺りには湧き水があることからオアシスが次第に見えてくる。摂氏45度を超す真夏の炎天下でもこの椰子の葉が生い茂る一帯は実に涼しい。現在はプランテーションが盛んで野菜・果物なども栽培されている。また、ここには天然湯のハマム(大衆浴場)があり、憩いの場所になっている。
 ザラットは、農業と漁業の町である。ラグーン(干潟)から延びた突堤の先に漁港があり延縄漁船などが並んでいる。ラグーンではアサリの栽培が行われており、貝泥棒による被害を防止するため、組合では監視小屋を設け、昼夜交代で見張りを行っている。ラグーンの後背地はデューン(砂丘)で、このロケーションが気に入った私は、組合の方達と魚と炭を買い出し、夜にバーベキューを行うことにした。砂丘からはキツネや野ウサギが顔を覗かせる。小屋の周りにネットが張ってあるものの、サソリが出てきたのには流石に驚いた。炭火でイワシを焼き、組合長の奥さん手作りのアサリのオジャ(チュニジア風煮込み料理)も頬張る頃には、日もとっぷりと暮れてくる。
 周囲に光源がないため夜は満天の星となり、天の川から星の滴がこぼれ落ちそうになる。チュニスの都会に住むチュニジアの友人に、幾つかの人工衛星が一定の光度を保ちながら空を駆け抜けていく様を指し示すと驚いていた。きっと我が国の実験棟「きぼう」もここからなら見えるに違いない。
 件のチュニスの友人はこの地が気に入ったらしく、家族でバカンスを過ごすのだと早くも算段していた。ここにはバンガローもあり、スタディオという家具付きの一軒家或いは部屋が借りられるとのこと故、皆さんも機会があったら是非訪ねて頂き、アサリと夜の天体ショーを満喫して頂きたい。
 海からのすてきな恵みを頂く所は、チュニジア国内にまだまだあるのだが、全部を紹介することはとてもできないので紹介はこれくらいにさせて頂く。
 最後に、チュニジアの豊かな海は違法操業によってアマモの群生が減少したり、環境影響物質などの排出により生態系が疲弊してきている。これらを止められるのは我々人間である。一人一人の努力の積み重ねが大切であり、私個人も努力していきたいと思っている。

         
   
  
             アサリの監視小屋

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