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第31話 コモロ通信 その22

 皆さん、一度は「寄生木(やどりぎ)」という言葉を聞かれた経験 がおありであろう。他の植物に寄生する植物ゆえ広義にはPARASITE(パラサイト)と言われる。
 日本では成人者が実家に頼った居候生活をする事象をパラサイトと 呼んだ。さて、この植物、日本ではあまり見かけないので実感がわかないかも知れない。
 一般的には、鳥が種子を他の木の上に運んでくると言われている。樹木の大きな枝分かれの上部にくぼみがあったりすると、そこに種子を含んだ鳥の糞が落とされ発芽して寄生するらしい。
 ヨーロッパでは、ビャクダンのような小振りな葉を持つものを、狭 義でヤドリギと呼んでいる。真冬に葉を落とす植物が多い中、この種の植物が青々とした葉を着けていることに生命力を感じるのであろう。ヨーロッパの人たちにとって、クリスマスの飾り付けとして狭義の ヤドリギはお馴染みになっている。
 しかし、ここコモロでは、ビャクダンとは異なる大振りの種で、垂 直の幹部分に寄生するものがある。写真をご覧頂くとおり、木の幹への張り付き方がちょっとグロテスクではある。
 寄生先は、椰子の木であったり、パンの樹であったり、大木であれ ば何でもあれの状態だ。寄生された樹木の養分は少しは利用すると思うが、ヤドリギ自体が光合成を行っているので影響は少ないようだ。これも生態系の一部を担っているのかも知れない。大木の垂直部分なので鳥が糞を落としてもすぐに落ちるか流されるに違いない。
 さて、どうやって最初に寄生するのか、今夜は眠れそうにない。

  





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