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第35話 コモロ通信 その26

 旅人の木(タビビトノキ)と呼ばれる植物がある。マダガスカルが原産で、舟を漕ぐ櫂(かい)に似た巨大な葉を持ち、成長すると高さは7mくらいになる。その茎は平面に扇状にきれいに並び、扇の要(かなめ)に当たる部分は、左右相互にきれいに配列されている。
 この植物は、茎に大量に雨水をため込むことから、茎の下部に鋭利 な物で穴を開けると水が出てくる。非常用飲料水として用いられ、旅人ののどを潤してきたことからこの名がついた。植物学的には「ゴクラクチョウカ科」に属するらしい。
 このほか、マダガスカルには世にも奇妙なバオバブという木がある。木を根っこごと引き抜いて逆さにした場合を想像していただければわかりやすい。まるで木の枝が根っこのように見える植物である。樹齢5000年ともなると直径10mにも達することがあるが、高さはせいぜい20m位でそのアンバランスさはなんとも不思議である。
 サンテグジュペリの「星の王子様」にも登場するが、彼はきっとセ ネガル辺りのバウバウを見たにちがいない。
 ここコモロにもバウバブの木はあるが、いたって小振りである。バオバブはマダガスカルが原産なので、世界遺産にも登録された場所があり観光地化している。
 バオバブを見るならマダガスカルがやはり一番いいのではないだろうか。そして、コモロにも寄ってみるという観光ルートもお勧めである。しかし、残念ながら筆者はまだマダガスカルの世界遺産を見ていない。
 日本の熱帯植物園でも、タビビトノキやバオバブをお目にかかる機 会があるかも知れない。熱帯植物園に行かれる機会があれば、気をつけて見ていただきたい。
 因みに、マダガスカル航空の機体の尾翼のマークは、タビビトノキ がモチーフである。

 



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