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第37話 コモロ通信 その28

 よその国に入国して、初めて手にするオリジナル物はその国の通貨 であることが多い。したがって、その国の自然や、代表的な建築物が絵柄になっているとなんとなく嬉しいものである。
 日本の紙幣は、人物像が多い。そのせいかなんとなく愛着がわかない。また、海外から来た人にとっては、その人物像が誰だかさっぱりわからず、興味を持ってもらえないようだ。ただ、人物で特に髭を生やした方の画は、偽札作りの防止に威力を発揮すると聞いた。それなりの理由があるので、一方的に人物像を選択していることに 異を唱えないこととする。
 さて、コモロ連合には
10,000、5,000、2,000、1,000、500の 5種類のコモロフラン紙幣がある。コインは、100、50、25コモロフランの3種類だ。
 因みに、コモロフランはユーロに連動しており、1ユーロが 491コモロフランくらいの固定相場である。その中で小額紙幣は自然画を採用している。
 写真の上が1,000コモロフラン紙幣、下が500コモロフラン紙幣である。また、画は上から、ピロッグ(丸太をくりぬいたカヌー)、シーラカンス、イランイラン(香料)の花、マングースキツネザルとなっ ている。
 シーラカンスについては皆さんご存じのように、太古の姿をとどめ た魚だ。実は、このアンジュアン島近くの水深200mくらいの海域で最 もよく捕獲されるらしい。
 私が勤務する水産学校が26年前に設立されて以降、アンジュアン島で捕獲されたシーラカンスは、生死にかかわらず水産学校に持ってこなければならない法律がある。
筆者はそれを知らなかったものだから、やってきた漁師にいきなり 「シーラカンスを引取りに来てくれ」と言われポカーンとしてしまった。
実は、今はこの法律は死文化してしまっている。
この国が90年代に内戦に陥り、水産学校が襲撃対象となって 荒れ果ててしまってから、全く機能してこなかった。以前は、シーラカンスをホルマリン漬けにしたり、剥製にしたりする機能を有していたのだが残念なことである。ここ水産学校から、多くのシーラカンスが各国の水族館や研究機関に友好の印として旅立っていったことであろう。因みに、日本にも結構剥製が贈られて行っているようなので、水族 館に行かれた際には気をつけて見ていただきたい。
 さて、ここコモロでは偽札作りを行っても儲からないので、まず偽 札が作られることはないと思う。
ただ、偽札が大量に出回ったら、この国の経済はいっぺんに破綻してしまう。一応、「見本」と表示させていただいた。

 



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