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上床 和則



第38話 コモロ通信 その29

 一時コモロ国を離任して帰国する日が近づいてきた。結局、水産学校とホテルの敷地内にあるマンゴの実はまだ小さく、 早場のものをわずかに食しただけである。次にこの地を訪れるのは2月になり、熟れたマンゴを食すことはできると思うものの、雨期で暑苦しい夏に変わっているはずである。
 さて、ラマダン(断食月)が終わり、8月31日と9月1日は宗教的な祝日ながら、官公庁も全て業務を停止した。街の中心部に行ってみると一般的な商店は休みであるが、屋台と露天の遊技興行がたくさん出ている。大人はほとんど見かけないが、子供がこんなにもいたのかと驚くく らい子供の街になっている。
 子供達は新調してもらった衣装を身にまとい、嬉々とした顔で駄菓 子を買ったりゲームに興じている。なんか、昔の日本の村祭りでの出店や興行を見る思いである。そういえば、レンタカーのドライバーの給料日が8月30日であったが、これから子供服を買いに行かなければならないと、そそくさと帰って行ったことを思い出した。どこの国でも、子供のお祭りの前になると親は大変なんだ。
 街なかで牛追い祭り(刀剣を使わない闘牛版と思っていただきたい)があるので行ってみようと思ったが、疲れて帰ってしまった。後日友人に聞いたところ、成人近くの若者の肝試しの行事みたいなもので、赤い布などを持って牛と対峙し、向かってくる牛をよけるのである。これもどこの国にも共通するようであるが、はやし立てられてやる気になった若者を、親が危険だからと必死に説得してやめさせようとする光景が見られるようになったと嘆いていた。
 休みはラマダン明け、つまり新しい月が始まった直後、そうなると 当然新月直後ということで大潮になる。大潮とは潮の干満の差が最も大きくなる時期で、水産学校近くの海は見事に潮が引く。そうすると普段見ることができない岩場が海面上に顔を出し、少々濡れるが珊瑚礁の縁まで歩いていける。
 最近、このアンジュアン島は珊瑚礁の生息域が増えて増大している ようだと地元の人が言っていた。環境的には喜ばしいことである。
 写真は、ホテルのベランダから眺めた大潮の日の海であり環礁の縁 が写っている。
 ところで、恐らく、これが今回滞在中の最期の「コモロ通信」になると思われる。長い間、つきあっていただいたことに改めて感謝申し上げる。
 

 



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