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第45話 コモロ通信 その36

 現在、アンジュアン島のムツァムドゥ市内のとあるホテルに長期滞在している。
 このホテルは外国人向けということもあり、レストランの他にバーがある。
 コモロ国はイスラム教の国とはいいながら、営業許可を取得すれば酒類を扱ってもよい。
 ただ、残念ながら、ここアンジュアン島は、闇商売を除き酒販売店というものは存在しない。
 さて、このホテルのバーには、海外からの客に加えて、地元の進歩的なイスラム教の方達もやってくる。
 どちらかというと、海外企業と商売を行っている経営者などであり、やはり商売上酒を飲むことは必要なようだ。
 一般従業員の月給が1万5千円くらいの中、ビールやウィスキーの料金が日本とほとんど変わらないので、客層はいかに金持ちであるかがわかる。
 清涼飲料水の社長、土建屋の社長、他のホテルの経営者などが、なじみ客となっている。とは言っても、決して宿泊客ではない。
 この輪の中に、短期の観光客などを交えて飲むことが多いのだが、私もどちらかというとすでに「なじみ客」の仲間に入れられてしまっているようだ。
 話題はというと、政治経済、スポーツ、その他馬鹿話が主流であるが、語学が苦手な私は、ついていくのに必至である。
 ただ、こんなへんぴな所で暮らしていくには、やはり情報は大切で、酒を飲みながらではあるが、いろいろ教えてもらって助かっている。そのほか、職場の学校の生徒達の社会見学の訪問先としてお願いしたりと、公私で重宝している。
 また、ときどき海外の方から自宅に招待を受けることがあるのだが、お土産として酒を持参する必要がある時は、ホテルの親父にウィスキーを原価で譲ってもらっている。
 この親父、結構親切で、コモロ国ではもう見ることはないと思っていた、シーラカンスが刻印された5フラン硬貨などをくれたりする。
さあ、また今日もそろそろなじみ客がやってくる頃である。
 それでは、乾杯!



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