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上床 和則



第6話 チュニジア通信 その6

 ローマの遺跡群が豊富(世界遺産も種々有り)なことに加え、ヤシの木、オアシス、砂漠、ラクダといった南国情緒が人を引きつけるため、バカンスシーズンともなると、ヨーロッパから大勢人が押し寄せてくる。さしずめ日本人が大好きな身近な南国ハワイかグアムの感覚と思っていただければよい。海岸線にはリゾートホテルが建ち並び、ヨット、モーターボート、水上スクーター、ハングライダー、なんでもあれだ。
 我が仕事の拠点、モナスティールも少々ランクは落ちるがリゾート地の一つである。リゾートホテルでは、水着姿が一般的なのに、仕事で来ている我々のスーツ姿や作業着姿は異様だ。まったく場違いである。したがって、海から道路の一本も二本も内陸に入ったランクの低いホテルに宿泊するのが常となっている。でもこんな木賃宿に毛が生えたホテルでもバカンスシーズン料金なるものがあり、7月になると料金がアップする。なんとか交渉してシーズンオフ料金に近い値段で宿泊継続しなければならない。さて、道路を隔てた向かいのリゾートホテルでは、中庭のプールサイドで夜12時頃まで歌謡ショー、ビンゴ大会やディスコで賑わっており、大音響が響いてくる。こちらはというと、ホテル内のいかがわしいバーでいっぱいやりながら、酒について考えてみる。
 旧宗主国のフランスがこの国に残していった大いなる遺産として、酒造工場・技術があり、イスラム教を主流とする国でありながら、独立後も民間企業で生産が続いている。
 ワインは、赤ワインはたまにいいのに当たるが、このくじ運まかせはブドウの豊作年による違いも勿論あるのだが、同じ年に生産され同じ場所に並ぶ樽でありながらちょっとした管理不足から味が異なってくる。この商品の均一性が保てるようになれば世界でも一級品で通用するはずである。気候的には白ワインとロゼの生産に適しており品質の良いブドウが生産される。こちらはクジ運のような当たりはずれは少なく、特定のラベルは結構評判である。イチジク蒸留酒も製造しているが、ここの人たちは何故かかつての日本に於ける焼酎のような虐げられた地位にこのイチジク酒(ブハ)を追いやっており、私は復権を切に願って、今日もバーでもこのブハをこよなく愛飲するのである。

              
           
地元ビール(セルティア)と
             お多福豆(モナスティールにて)
            
              
 

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