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いわし雲
                           鈴木 敬一




 第1話 「人口減少は日本の危機か」

 日本の人口は来年ピークを迎えるが(一億二千八百万人)、再来年より減少に転じ2050年には一億人、今世紀末には現在の半分の六千万人余まで落ち込むと推測されている。
 その結果、労働人口が減少し経済成長が鈍化するだけでなく、高齢者比率の増大により年金などの社会保障制度が崩壊することが危惧され、まことに憂慮すべき国家的な命題として昨今、少子化対策の確立が強く求められている。
 しかし、視点を変えて日本の人口は、国土面積、資源、自然環境などを考慮した場合、本来どのくらいが適正か考えてみることも必要であろう。
 わが国の人口は明治の初頭には三千五百万人、八十年後の昭和25年には八千四百万人であった。天然資源に乏しく食糧自給率が40%で先進国中最低である狭隘(きょうあい)な日本が果たして今後も一億人を超える人口を養い続けることができるだろうか。
 ちなみに英国は人工六千万人で面積は日本の約三分の二、食糧自給率は74%、フランスは五千九百万人で国土は1.5倍、自給率は130%、ドイツは八千二百万人、国土は94%、自給率は91%である。しかも、日本は国土の大半が山岳地帯であり、農用地はわずか13%に過ぎない。
 今日、世界が直面している最大の課題は、温暖化や森林伐採などの環境破壊の防止と食糧、水の持続的確保と化石燃料枯渇化問題であろう。かかる難題の招来は、いずれも工業化の進展もさることながら世界人口の急激な膨張に起因していることは明白である。
 環境の持続的保全と地政学的観点からして、多少の犠牲は払っても日本の人口減少は将来を見据えた場合、望ましい減少と考えたい。量より質が大切である。

 (本稿は『水産週報』 2005年9月15日に掲載されたものです)





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