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いわし雲
                           鈴木 敬一



 第10話 「NHKのあり方

 昨今、相次ぐ不祥事の発生に伴い、公共放送としてのNHKのあり方が大きな政治的、社会的問題となってきている。受信料の義務化を廃止し民放と同じように広告収入による営利企業にすべきという意見すら出てきている。
 しかし、視聴率を上げることのみを最大の目的に、大衆におもね、著しく低俗化した番組があふれている民放を見るにつけ、視聴率にこだわらず、広く客観的なニュース、各種スポーツ、伝統芸能、クラシック音楽や雅楽などを放映し、広範にわたり時事問題や文化と教養の基礎を培うテレビ局は、たとえ有料であっても絶対に必要であると考える。
 報道の自由の名の下に、身震いするような低俗番組が氾濫(はんらん)、高名な評論家の言葉を借りれば、まさしく「一億総白痴化」に拍車をかけているであろう現実は、青少年に与える影響や将来の日本を考えると空恐ろしい限りである。こういう番組にコマーシャルを流している会社は、品格・品性、倫理観などについては一体どのように考えているのであろうか。
 かつて、ソ連邦(現ロシア)の共産党の機関誌「プラウダ(真実という意)」と政府の発行紙「イズベスチヤ(報道の意)」は、その変頗(へんぱ)な内容により、「イズベスチヤにプラウダなく、プラウダにイズベスチヤなし」と西側から揶揄(やゆ)されたように、時の権力の言いなりになることは絶対に許されてはならない。
 また、民放との競合の仲で、紅白歌合戦や大河ドラマのような民放が本来取り組むべき性格の番組に大枚の受信料を使っているが、はたしてその必要性と意義があるであろうか。
 本音を言えば、筆者の一番愛好している囲碁・将棋対局がなくなってしまうことを怖れているのも、NHKを支持する一因である。

   (本稿は『水産週報』 2006年6月5日に掲載されたものです)


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