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いわし雲
                           鈴木 敬一




 第15話 「安全安心について

 私たち食品を取り扱う企業は、その経営理念の第一に「安全、安心」を挙げているし、世論もこの安全性への関心は著しく高い。
 しかし、安全安心、生命への危険という観点からすれば、食材や食品もさることながら、それ以上に毎日のようにマスコミをにぎわしている種々な傷害殺傷事件や医療ミス、薬害、交通事故(特に飲酒による)などに起因する安全の危惧(きぐ)の方がはるかに深刻であろう。そして犠牲者が圧倒的に多いにもかかわらず、これといった有効な防止手段はとられていない。
 他方、昨今マスコミで頻繁に報じられているBSE(狂牛病)や鳥インフルエンザについていえば、死亡した日本人は今のところ皆無である。
 さらに、北朝鮮が発表した核実験やミサイル発射は何十万何百万人というほとんど無防備に近い状態の日本人の生命を脅かしている極めて切実で深刻な大問題であるといっても過言ではない。
 北朝鮮問題は別として、国内での安易で平穏な生活と生命の軽視は、本源的には幼少時からの教育に根差していると考えられるだけに、何よりも学校や社会で充実した人間性を育成する施策を、積極的に取るべきである。
 そのためには教師、医師、警察官の質の向上と数の増加に政府は優先的に大幅な予算支出を行い、国民の安全を守るよう真摯(しんし)に努めるべきである。これにより税金が多少高くなったとしてもやむを得ないと思う。
 かつて「安全と水は無料で手に入る」といわれた日本は、今や遙かかなたに置き去られてしまったが、再度、世界に冠たる安全国家としての評価をできるだけ早く復活させたいものである。

   (本稿は『水産週報』 2006年11月15日に掲載されたものです)


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