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いわし雲
                           鈴木 敬一



第17話 「魚屋さんと魚食文化

 魚屋さん(鮮魚小売店)は最盛期の1976年には5万8千軒あったが、2002年には2万5千軒と26年間で半数以下になってしまった。しかも、その経営者の約半分が60歳以上と高齢化してきている。
 その主たる原因としては、スーパーなどの量販店の増加とライフスタイルの変化に伴う食の外部化、つまり外食や中食へのシフトが挙げられる。料理は家庭で作る時代から買う時代に変わってきていると言えよう。 
 しかし、数千年にわたり食の主役であり続けてきた魚が家庭で料理されなくなることは、大仰な言い方をすれば日本の食文化が破壊されることにほかならない。何としても是正したいものだ。そこで大きな役割を期待されるのは末端での魚の販売者、特に地域に密着し、対面販売している知識と経験が豊富な魚屋さんである。
 スーパーは流通量の多い魚が主要な商材で、概して低価格志向であり、地域性や季節性に欠けた売り場が目立つ。魚屋さんはこれとは逆に価格請求だけではなく、品質見合い価格を提示し、プロとして食品特製(味覚、旬、料理方法、漁場など)に関する情報や知識を提供し顧客に啓もうし、対面販売の強みを発揮することができる。高齢者、単身者、身体不自由者などへの便宜、例えば宅配や注文取りなども必要であろう。
 また、後継者(二代目)の育成も大きな問題である。そのためには、魚についての基本的な知識(魚類学、水産技術、調理方法の基礎)を組織的に教育するシステムを構築することが肝要である。
 年に数週間、各地の水産高校などの施設を利用して講習会や学習をする機会を与え、教育コースを終了した者には免状を授与し技能資格を与えることなどだ。
 魚とその調理に消費者の目を向けさせるには、いずれにせよ地道な努力が必要であろう。

   (本稿は『水産週報』 2007年3月5日に掲載されたものです)
 


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