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いわし雲
                           鈴木 敬一



第25話 「食の技術革新

 
 昭和20年の終戦から今日にいたるまでの60余年に、わが国の食生活は驚異的に変化した。飢饉に近い状況から欲しいものが、いつでも安直に入手出来る豊潤な時代になった。このような劇的な変化の要因は一体、何であったのか。
 政治、経済的な理由は別にして、技術革新の見地から考えてみたい。加工技術では、まず昭和30年前半に開発された「即席麺」があげられよう。ウドン、ソバ、ラーメンなどであるが、その優れた味覚、簡便性、価格などの優位点から世界の需要を引きおこし、完全に国際食品となった。日本では昭和47年の浅間山荘事件で機動隊員がカップヌードルを食べる姿がテレビ放映され普及拡大につながったと言われている。
 次に昭和40年始めに大手水産会社で企業化されたスケトウダラを原料とした冷凍スリ身の洋上大量生産方式が挙げられる。この技術で大量生産される安価なスリ身により、竹輪、カマボコ等は極めて身近な日常食品となり、さらにカニカマは世界を席捲、「surimi」は世界共通語となった。
 冷凍保管の分野で特筆すべきは、昭和40年後半にマイナス50度超の超低温域の冷凍保管技術が開発され、冷凍マグロが刺身用として使用できるようになり、販路拡大と遠洋マグロ漁業の発展に大きく寄与したことである。
 漁業の部門では「魚群探知機」が漁獲向上に大きく貢献している。戦時技術の転用の成功例でもある。
 調理方法でも一大革新があった。電子レンジ、俗称「チン」である。昭和40年代後半からの高度経済成長期に普及がすすみ、調理の高度化と効率化を著しく高めた。
 以上が筆者が選択した、食品の技術革新トップ・ファイブである。


(本稿は『日刊食料新聞』 2010年2月5日に掲載されたものです)
  

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