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いわし雲
                           鈴木 敬一



第26話 「普天間基地移転問題について」

 
 現在、日本政府が解決に苦慮している最大の案件の一つは、沖縄にある米軍普天間基地の移設問題である。基地を完全に撤廃してしまうか、海外移転でもしない限り、いずれ国内のどこかに決めざるを得ない。
 米軍基地の受け入れは、大半の日本人は恐らく国防上の観点から止む得ないと思っているが、自分の身近な地域に設置される場合には間違いなく強い拒絶反応を示すであろう。しょせん人間はエゴイストなのである。軍事基地だけでなく、一般的に世間で必要不可欠であるにもかかわらず、とかく敬遠されがちな施設、例えば火葬場、ゴミ処理場、刑務所、原子力発電所などについても同じことが言える。
 人には苦痛を与えておいて、自分は安楽をし、しかも恩恵や便益だけは等分に享受するのは、著しくずるく、かつ不公平であり看過放置すべきではない。各人がそれなりに応分の負担を負うべきであるが、最も受入れやすい方法は、金銭による処理である。
 基地受入れに伴う物質的、精神的苦痛を金銭換算して、受入れる地域は対価としてそれを政府に要求する。言いかえれば、国民がみんなで支払うのである。
 受入れを申出た地域は、それぞれ希望価格を提示し、一番低価格のところに決まるサゲ
・セリ方式(?)とする。応札者が少なければ法外な金額になる可能性もあるが、止む得ないだろう。
 筆者は、かつて、居住している集合住宅で管理組合の責任者に成り手がなく困り抜いた時に、報酬条件で公募することを提案したことがある。今回の発想も、それと近似しているが、管理組合責任者の公募案は周囲の反対で却下された。金銭で解決する性格の問題ではないとの理由で。そして、結局泣き落としで決着させたが…。     


(本稿は『日刊食料新聞』 2010年2月5日に掲載されたものです)
  

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