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いわし雲
                           鈴木 敬一


第29話「身ぶり、手まね」

 言葉や文字でなく身ぶりや手まねで意思を伝えることは、ボディ・ランゲージとも呼ばれ、国や民族により特異性があり、また同じ表現でも意味が異なることがある。グローバル化が進んでいる昨今、外国人との接触、他民族との交流はますます頻繁になってきているだけに、不用意な摩擦や誤解、トラブルはできるだけ避けるべきである。そのためには相手国の基本的なボディ・ランゲージは多少なりとも理解しておくことが望ましい。
 例えば、最もポピュラーな仕草である親指と人さし指で作る丸は、大半の国では了承を意味する「OKサイン」として用いられるが、国によっては全く別の意味となる。日本では元来、お金を表したし、フランスや豪州ではゼロを示す。また、トルコやベネズエラではどういうわけか同性愛の意味となる。
 日本では何かと子供達や若い女性がカメラに向った時にとりたがる動作、人さし指と中指を突き出す「Vサイン」は欧米では勝利を表すのが一般的だが、1960年代は平和を求めるピースサインとしても用いられた。しかし手の平を内側に向けると、英国やカナダでは大変卑猥な意味となってしまうので要注意。
 このように、意味が極端に異なるジェスチャーとしては、握りこぶしの人さし指と中指の間から親指を突き出す、日本では禁じ手となっている指の形が、ブラジルでは幸運を祈るオマジナイとして用いられているというから驚きである。また、頭がオカシイ人を表す時に日本や北米では、人さし指でコメカミの横をぐるぐる回す仕草をするが、オランダでは「電話ですよ」の意味。
 いずれにせよ、腕や手を大きく広げたり、おおげさな表情や派手なジェスチャーは、我々日本人には不似合、不慣れであり、できるだけ避けた方が賢明であろう。 


(本稿は『日刊食料新聞』 2010年3月5日に掲載されたものです)
  

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