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いわし雲
                           鈴木 敬一

全部イチキュッパ!

第33話「イチキュッパ(198)」

 筆者は自宅から築地市場に来る場合、タクシーを使うことが多い。料金は初乗り料金内であるので大概710円である。1万円札は論外だが千円札を出すと運転手はイヤな顔をして、10円は持っていないかと聞く。中には10円まけてくれ300円の釣銭が返ってくることもまれにはあるが。
 一体どういう理由で710円に料金設定されたのであろうか。物知りの話では、運賃の許可の上限が710円なので目一杯な線で決められたとのこと。しかし支払う利用者の立場からすると、キリ良く700円の方が便利ですっきりとするし、利用度合も高まるであろう。
 奇妙な価格表示は、スーパーなどの売値の198円(イチキュッパ)とか298円(ニキュッパ)についても言える。消費者の購買意欲をそそるための価格戦略であると言われてい、広く世界的な現象である。
 日本では8(パ)が末広がりで明るいイメージがありよく使われるが、米国では9、ロシアでは5が、そしてドイツは何とゾロ目の55、88などが端数価格としては好まれている由。オーストラリアでは最小単位硬貨の1セントコインがなくなり5セントコインになった為に、表示とは別に支払いは5セント単位の切り上げや切り下げになった。
 しかし本当に198円と200円では売れ行きが違うのであろうか。老婦人が1円硬貨を財布から何枚も取り出し支払っている場に出くわすと、こんなに店も客も手間がかかり煩わしいのであればキリのいい価格にしたらと思う。
 価格表示は198円にしても、支払いは200円とし、差額はしかるべき福祉施設などに寄付する旨を店頭に表示した方が、より以上に顧客の心理をつかむような気がするのだが…。
 100円ショップでは端数表示をしない。変な技巧的価格戦略よりは、本質的な低価格の方がアピールするはずである。
(てるみ)


(本稿は『日刊食料新聞』 2010年4月2日に掲載されたものです)
  

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