|
第1話 「野口五郎の思い出」
私の8歳上の姉は西城秀樹の大ファン。小さい頃、よく一緒に踊らされた。「やめろっといわれても♪」と歌われると足を上げなくてはいけない(笑)
私たちがモスクワにいたころ。親の駐在員仲間の若い奥さんが私に聞いた。「お姉ちゃんは西城秀樹が好きだけど、のぞみちゃんは誰が好きなの?」
「あたしはね~、野口五郎♪」実は好きでも嫌いでもなかった。姉の西城秀樹に対抗して言ってみただけのことだった。
後日、その奥さんが私に野口五郎のレコードをくれた。モスクワという不便な場所に住んでいたのに、私を喜ばせようと手を尽くしてレコードを取り寄せてくれたに違いなかった。奥さんに申し訳なかったし、野口五郎にも申し訳なかった。レコードジャケットの憂いを含んだ野口五郎の顔を見るとため息が出た。そして一度も聴いていない。
|
|
|