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万葉恋歌
中西進博士の文庫本『万葉集』(講談社文庫)を読む
上野亮介
第54葉 (巻14・3544)
明
あ
日
す
香
か
川
がわ
下
した
濁れるを 知らずして
背
せ
ななと二人 さ
寝
ね
て
悔
くや
しも
水のきれいな明日香川が、実は下の方が濁っていることも知らないで、あの人と二人で寝てしまったことが悔しくてなりません。
東歌に登場する女たちは情熱的です。その熱い思いをストレートに相手にぶつけます。しかし、ときには、こういうことになる。でも、比喩の川がどうして明日香川なのか。他の東歌がそうしているように自分の土地の川に何故しなかったのか。想像するに、相手の男が
都
みやこ
から赴任してきた人物であったからではないでしょうか。
颯爽
さっそう
たる
都
みやこ
人
びと
に、しかし不実な都人に、彼女は適当に遊ばれた。だから奈良の川を引き合いに出した。そう考えると、この歌は、まるで小説のようなストーリーを宿していることになります。
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