放課後は
さくら野貿易
放課後のページ

さくら野歌壇

万葉恋歌

中西進博士の文庫本『万葉集』(講談社文庫)を読む

                     上野亮介



 第59葉  (巻14・3461)

 あぜと言へか さはなくに 暮れて よひなはなに 明けぬしだ

 いくつもの東国方言が混入していますが、その説明は
いて、歌意は「何と言うか、一緒に寝て逢うのではないのですね。日が暮れて夜は来ないで、明け方に来るなんて」

 これは女の歌です。しかし、何と言うか、間の抜けた男もいたものです。朝方になって何をしに来たのか。女の朝は忙しいのです。しみじみ語り合って
ともする時間などありません。この男、夜の内は何か事情でもあったのでしょう。そのまま来ないという手もあるのですが、朝であってもとにかく来た。そこは評価してあげましょう。でも、そこはかとなく気の抜けた歌の調子が、女の心境をよく表していて、第三者にはユーモラスな歌です。



『万葉恋歌』掲載一覧

【これまでのさくら野歌壇】
2007年 2006年 2005年 2004年 2003年 2002年 2001年