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万葉恋歌

中西進博士の文庫本『万葉集』(講談社文庫)を読む

                     上野亮介



 第60葉 (巻14・3489)

 あづさゆみ やまの しげかくに いもろを立てて さはらふも 

 欲良の山辺が茂っているので、恋人には立ったままちょっと待ってもらって、その間に寝場所の枝や葉っぱを払うのだ。

 「梓弓」は枕詞。「欲良」は地名。その欲良の山辺の出来事です。なんだかすごくリアルですね。目に見えるよう。この二人は、人目を盗んで逢うために、女の家ではなく山辺で、夜間ではなく日中、事を運ぶしかなかったのでしょう。

 「繁茂は人目を避けるには便だが、払わなければならない」

 中西進博士の鋭い脚注です。博士はこんな方面まで
造詣ぞうけいが深いことに驚かされます。



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