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万葉恋歌

中西進博士の文庫本『万葉集』(講談社文庫)を読む

                     上野亮介



 第62葉 (巻14・3377)

 さしの 草はもろ向き かもかくも 君がまにまに は寄りにしを 

 武蔵野の草はあちこちを向いている、そのように私も右と言われたら右、左と言われたら左、とにもかくにもあなたのお気持ちのまま、私は完全にあなたのものよ。

 もしこれに言葉を継ぐとしたら、「だから、どうぞ、そばに置いてね、あなた好みの、あなた好みの、女になりたい♪」とでもなるのでしょうか。でも、「悪いときは、どうぞ、ぶってね♪」とまではいかない。そこまでやると武蔵国(今の東京都)の女は黙っていない。そもそも妻を殴る夫がいたかどうか、結婚の形態からしても、
万葉人まんようびとの心のありようからしても、ちょっと想像しにくい。



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